第十二回 酒屋万来文楽 傾城阿波の鳴門 十郎兵衛住家の段



令和元年11月30日(土) 15:00開演
会場 白鷹禄水苑 宮水ホール 

西宮は文楽の源流「傀儡師」発祥の地といわれ、文楽と大変縁の深い町です。同時に西宮は全国有数の「酒どころ」でもあります。この「酒」と「文楽」という西宮を語るに欠かせない二つの要素を、造り酒屋において同時にお愉しみいただこうというのが、「酒屋万来文楽」です。第十二回目にあたる今回は、人口に膾炙する最も有名な演目の一つ、「傾城阿波鳴門」を取り上げました。

「傾城阿波鳴門」は、徳島藩のお家騒動を題材にした十段の時代物ですが、現在ではその八段目「十郎兵衛住家の段」のみが人気曲として上演されています。特に前半は「巡礼歌」の通称で知られており、我が子と知っても名乗れぬ母親の心の葛藤や、父母を慕うおつるの幼気な姿が眼目となっています。この「巡礼歌」がしばしば各地の普及公演などで上演されているのに対し、悲惨な結末を迎える後半もあわせて上演されることは稀で、国立文楽劇場では平成10年を最後に上演されていません。今回は久々に「十郎兵衛住家の段」を通してお楽しみいただくことになりました。またこの度は「酒屋万来文楽」だけの特別企画として、全編、太夫二人による掛け合いで、より臨場感のある舞台となりました。

 

前半では、子を思う母の情愛、父母を慕うおつるの哀れさが何度見ても、また聴いても涙を誘います。両親に会いたいと切々と訴えるおつるに対し、お弓は思わず名乗ろうとするものの、主君のためとはいえ、盗賊として追っ手から逃れる身。おつるを巻き込みたくないと、悩みに悩んだ末、国元へ帰るように諭しておつるを帰し、泣き崩れます。おつるの両親を恋う気持ち、お弓の我が子を思う愛情と葛藤が、お弓・津駒太夫、おつる・芳穂太夫のかけあいによる臨場感たっぷりの語りと藤蔵さんの哀切を帯びた三味線で表現され、胸を打ちます。

後半では、我が子とは知らず道で出会ったお鶴を連れ帰った十郎兵衛が、金を借りようとして誤ってお鶴を死なせてしまうという悲惨な結末を迎えます。和生さんが遣うお弓が娘の亡骸を抱き悲嘆に暮れる姿には涙する観客も。嘆きのうちにも捕手の迫る気配に十郎兵衛は覚悟を決め、捕手を追い散らすとお鶴の死骸もろともに我が家に火を放ち落ち延びるというところで幕となります。

来春、津駒太夫が錣太夫を襲名、文楽劇場の初春公演にてご披露をされるとのことで、本公演が津駒太夫として最後の公演となりました。また病気療養中の呂勢太夫さんに替わり、お勤めいただいたのが芳穂太夫です。汗も飛ぶがごとくの床の熱演、間近でふれる人形の生き生きとした様子に、この物語の悲劇が浮き彫りとなり、一層胸を打つ一段となりました。

文楽公演に続く後半の「文楽の手ほどき」では、和生さん、津駒太夫さんに再度ご登場いただき、演者自ら、演じる上での苦労や、演目にまつわる興味深いエピソードをうかがうとともに、観客からの質問にもざっくばらんにお答えいただきました。特に襲名にまつわる質問が集中し、襲名というのは、先代の芸や精神を受け継ぐという、演者一個人の問題にとどまらず、その芸能本来がもつ伝統を受け継いでいくという点で、大切な意義があるというお話が印象的でした。また文楽の場合、歌舞伎のように観客が掛け声をかえるのは、タイミング的に難しいが、これぞという見せ場、聴かせどころで拍手が起こるのは演者として大変うれしいとのコメントに会場からは納得の拍手が。終始なごやかな雰囲気の中、演者がより身近に感じられるひと時でした。

 

 



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