第二回 酒都で聴く女流義太夫の会 人間国宝 竹本駒之助を聴く 壺坂観音霊験記



太夫:竹本駒之助(文化功労者・人間国宝)
人形:吉田和生(人間国宝)《特別出演》

平成30年7月16日(月・祝)
15:00 開演 (受付開始・開場14:30)
白鷹禄水苑 宮水ホール

昨年より開催しております人間国宝、竹本駒之助さんをお招きしての「酒都で聴く女流義太夫の会」。第二回目となる今回は、昨年度の竹本駒之助さん《文化功労者》選出及び、10年にわたり白鷹禄水苑の文楽公演「酒屋万来文楽」にご出演いただいている吉田和生さん《人間国宝》認定を記念して、お二人の特別競演を企画いたしました。通常、太夫と三味線のみの素浄瑠璃形式で演奏される女流義太夫ですが、今回女流義太夫と文楽人形の夢の競演が、人間国宝のお二人によって実現しました。演目は、明治維新から150年目にあたる年ということもあり、明治期に書かれた人気曲「壺坂観音霊験記」から、「沢市内より山の段」を取り上げました。

冒頭、場面は沢市の家。暖簾口からお里が出て繕い物をしているのですが、実に所作が細かく、本当に糸があるかのようです。病により視力を失った沢市が、女房お里の内職のかせぎに助けられながら細々と暮らしている、そのつましい暮らしぶりがこの場面からうかがえます。人の噂にも美しいというお里が深夜家を空けるのを不審に思った沢市が問い詰めるのですが、ここで「三つ違いの兄さんと・・・」という、お里の有名なクドキとなります。ここでお里の「貞女ぶり」が語られ、後に観世音の心まで動かす、真実の姿が明らかになります。駒之助さんの、見台にすがりつくようにして前かがみになり、心の底から絞り出すように語る様に、お里の心情に感情移入しない者はおそらくいないでしょう。実はお里が、沢市の目が治るよう、壺坂寺に願掛けに行っていたのだと知った沢市は、貞節な女房を疑ったことを詫び、お里の勧めるままに壺坂寺へ参詣することにしました。

ここで場面が展開し壺坂寺山上となります。壺坂寺に至る道行で、沢市がつかえながら歌う口三味線も見事で、死の決意を暗示させる悲哀が胸に迫ります。しかしお里はそれに気付きません。沢市が石につまずいてわざと転び夫婦がおかしがって笑う様子が、かえってこの悲しみ増幅させるのも語りの力量だと思います。この後、自分と暮らしていてもお里は幸せにはなれないと絶望した沢市は、傍らの谷に身を投げてしまいます。この場面はまさに人形ならではの表現で、人形遣いが今まで遣っていた人形を文字通り放り投げ、谷底へ落ちてゆく様子を表すのです。初めて見る者は意表をつかれ、思わず「あっ」と声をあげるような場面です。そこに虫の知らせで不安を感じたお里が戻ってきます。沢市の死を知り、どうして自分を置いて先に死んだのか、ひどいという叫びを何度も繰り返すのですが、最後にはあの世で一人だと目が見えなく不自由だろうと、最後まで夫を気遣うくだりには、本当に胸が詰まり、涙を誘われます。まさに磨き抜かれた語りの魅力が遺憾なく発揮される場面です。後を追ってお里も身を投げますが、観音のご利益で二人の命は救われ、沢市の目に視力が蘇ります。初めて目の当たりにする成人した女房の姿に、思わず「初めてお目にかかります」と挨拶してしまう沢市に、開場は笑いに包まれます。この後はツレ三味線も加わり、二人は観音の霊験に感謝し、「万歳」を踊りめでたく幕となります。

休憩を挟んでの第二部では、お二人による対談形式で、関西におけるかつての女流義太夫界、また文楽人形との交流についてなど、貴重なお話もおうかがいしました。 昭和26年から43年頃、宝塚歌劇の生徒さん達が義太夫歌舞伎の自主公演を行っていた時代、この指導にあたるともに、一座を組んで出演していた竹本三蝶に特に請われ、まだ十代だった駒之助師匠も一座の一員として参加されていたそうです。この三蝶さんは興行主としてもとてもやり手の方だったらしく、戦前より、吉田栄三、玉助、文五郎(文雀さんの師匠)といった当時の錚々たる人形遣いの面々とともに、四ツ橋文楽座での文楽人形と女流義太夫の人形浄瑠璃公演も立ち上げられました。当時若手だった文雀さんも参加されており、駒之助師匠もよくご一緒されていたということです。この公演は昭和40年代前半まで続き、入門して間もない和生さんも参加されていたそうです。会場にはなんと三蝶さんのお孫さんもおられたことがわかり客席は大いに盛り上がりましたかつては文楽人形と女流義太夫の共演という意欲的な試みが関西を舞台に積極的に行われていたということは大変興味深いことだと思います。

 

関西では約半世紀ぶりに、当時舞台に立たれていた駒之助師匠、そして文雀さんは惜しくも一昨年お亡くなりになりましたが、その芸を受け継ぐ和生さんがここで共演されるということは大変感慨深いものがありました。関西における女流義太夫について、その歩んできた道のりに思いを馳せながら本日のお二人の演技、そしてお話にふれ、文楽とともに、女流義太夫という関西にゆかりの深い芸能を守り伝えていくために私たちに何ができるのか、ご一緒に考えさせていただく一つのきっかけになったのであれば幸いに思います。

 

[出演者]
太夫  竹本駒之助(文化功労者・人間国宝)
三味線 鶴澤津賀花
ツレ  鶴澤駒清

人形  女房お里 吉田和生(人間国宝)《特別出演》
座頭沢市 吉田玉佳
観世音  吉田和登
吉田玉勢
吉田玉誉
吉田玉路
吉田和馬

[プログラム]
第一部 人形浄瑠璃公演 「壺坂観音霊験記 沢市内より山の段」

休憩 (きき酒・ドリンクサービス)

第二部 人間国宝対談  竹本駒之助×吉田和生
「関西における文楽と女流義太夫」

 



未成年者の飲酒は法律で禁じられています。お酒はおいしく適量を。
妊娠中や授乳期の飲酒は、胎児・乳児の発育に影響するおそれがありますので、気をつけましょう。
飲酒運転は絶対にやめましょう。


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